“おび” 100万円

パチンコをしていたころ、1本といえば1000円でした。
商売や事業をしているひとにとって、1本といえば100万円だそうです。
そして、競馬をするひとは、100万円のことを “おび” と言います。
馬券の換金

的中馬券を機械に入れると、換金されておかねが出てきます。

競馬をしたことがない多くのひとでは、
- 銀行カードを入れる箇所に馬券を入れるATM
というイメージでしょう。

その際、ハズレ馬券の場合は、
- “この勝馬投票券は的中していません”
大きな機械声が流れ、突き返されます。

どういうつもりか、購入した馬券をぜんぶ入れるおじさんは意外に多く、
- “この勝馬投票券は的中していません”

ハズレた結果は知っているだろうに、10回以上連続して響かせてました。
限度額を超えると

最近はよく知りませんが、わたしが競馬をしていた当時、払戻しが100万円を超えるとATMみたいな機械ではなく窓口対応だったです。

ふだん係員はおらず、置いてある呼び鈴を鳴らす仕組み、

その音がすると、払戻し周囲にいるひとは、思わず反応してしました。
“おび”

窓口でもらう100万円は、新札でないためちょっと分厚く、JRA専用のおびで巻かれ、封筒に入れて渡されます。

それでだからでしょう、競馬をやるひとは、
- 先週、阪神の荒れた最終、降級の〇〇アタマ12点で “おび” 取ったんよ
100万円のことを “おび” と表現するわけです。

昨今、競馬でも競輪でも競艇でも、1着2着3着を連続して当てる3連単が導入され、高配当が日常となり、

一撃で10万円や100万円のチャンス、こんなわたしでも何回か “おび” を持ち帰る機会がありました。

そんな経験もなく、呼び鈴を鳴らしてやってきた払戻し係のひとから、
- 馬券に印刷してある小さな賭け額
- ボヤッとしてるわたし
をみて、

- “その機械に入れたらいいですよ”
と言われたこともありました。

きっと頭がワルそうに見えたのでしょう。

まあ失礼な話で、いつもならカチンとくるとこですが、“おび” のときはなんともありません。

ちょっと澄ました感じで、
- “140万くらいになるのですが”
と言って、

- “あれ、ちょっとお待ちください”
となるのが、また楽しかったですねえ。

といって、滅多にない高配当もしばらくしたらいつもどおりのスッテンテン、

乾いた雑巾をしぼるように必死でかき集めたはずのおかね、
- そのまま貯めとけば “おび” なんてすぐに貯まるのに
今なら、たしかにそう思えます。

ギャンブル依存だったころの自分へ伝えようとしてくれる、ありがたいひともいました。

でも、“こんな生活はもうイヤだ” と心の底から思うまで、聴こえず響かずだったです。

先のことも何も考えられず、ただ取り憑かれたように暮らしていた、情けない、恥ずかしい、あのころ、

今回はめずらしく反省と自戒をこめ、なつかしさなしで想い出はなしをおわります。





